" 天井 " ▲ BACK TO TOP


ふと目が覚めた。
これからどうすればいいか、そんなことを考えていたら夢を見た。

除隊して、病院でリハビリを続ける。少し良くなったら、田舎に帰る。
そこで、こんな体でもいいと言ってくれる女の子を見つけるのだ。
美人という程ではないけれど、可愛くて優しくてグラマーで、
そんな子と結婚して小さな家に住んで、それから

「やっと起きたか」

「うわびっくりした」
隣のベッドのロイが、こちらを睨みつけていた。
ハボックは叫んだ拍子に脇腹が痛み、手で押さえながらのけぞる。
「寝ても起きても騒がしい奴だな全く」
「俺…何か寝言言ってましたか」
「女の名前をやたらと並べまくっていたぞ。おかげで眠れん」
ロイが指折り数えて挙げた名前は、全てハボックが別れた彼女の名前だった。
「ソラリス、とか言ったら叩き起こしてやろうかと思ったがな」
意地悪く追い打ちをかけられ、ハボックは額に手を当てる。
本当なら枕を抱えて転げ回りたいくらいだ。

「いい夢見てたんスよ」
この状況でどうやったら、とは言わなかった。ロイはしばらくハボックを見つめると
そうか、と小さく答えて天井を見上げた。
「未来の俺は、可愛い女の子と結婚してるんです」
ハボックはロイの方に首だけを向けて話しかけた。
「こんなになっちゃったから、除隊してるんですけどね。んで田舎に戻って、
彼女ができて、結婚して、子供作って、平和に暮らしてるんです」
平和に。
ロイは動かない。ハボックはにこにこと言った。
「いいでしょ?その頃には大佐が大総統になってて、この国も戦争しなくなって、
みんな平和で幸せに暮らしてるんですよ」
ロイは動かなかった。ハボックは一息つくと、天井を眺めた。
「…最後まで役に立てなくて、すいません。でも」

それでも、あんたが目指す道の先を俺も見たい。
例えもう側にはいられなくても。

「………」
ふと、ロイがハボックの方に視線をやると、ハボックは上を向いたまま目を閉じていた。
眠ったのだろうか。
ロイが再び天井に視線を戻すと、すんません、と小さな呟きが聞こえた。
いや、とロイも小声で返事をすると、それきり会話は闇に吸い込まれ、途絶えた。



//end.




※ガンガンねたばれ…。根気一杯仲良しの二人に萌えつつも、素で辛い。痛い。


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